フレドリック・ブラウン「不良少年」、ジェイムズ・ヤッフェ「ママは憶えている」、赤川次郎「わが子はアイス・キャンデー」の、3編を収録。
【内容】
「不良少年」 Little Boy Lost フレドリック・ブラウン
「ママは憶えている」 ジェイムズ・ヤッフェ
「わが子はアイス・キャンデー」 赤川次郎
【感想】
不良少年、という言葉の印象は、まだあどけなさが残る、やんちゃな子どもたち。しかし、この短編集にでてくる少年(未成年)たちは、そんなかわいいものではない。既にいっぱしの犯罪者だ。
特に印象に残るのが、赤川次郎の作品。小学生が金融業(貸金業)を始めると、同級生、学校の先生、保護者など、次々に借りに来る。借りた金は返さない、借りた金で良くない事をして楽しむ、お金にだらしない…そのほか、様々な問題が噴出していく。人間のいやらしさが少しずつ露呈していく様子は、見事としか言えない。あまりにリアルで、読後に自分の身近な人たちの顔を思い浮かべてしまった。
犯罪にお金は必ず絡んでいる。そしてお金の扱い方には、良いも悪いも人柄が出る。子どもといえども、ただ「かわいいから」「かわいそうだから」では済まされない問題があるのに、周りの大人たちは、貸金業を始めた少年とまともに話ができる人がいない。大人たちは、全員弱みを握られているか、少年に対して無関心であるか、どちらかだ。作品を読んでいくと、どっちが大人なのか子どもなのかわからない。実年齢よりも、精神的な成熟度が問われているような気がした。
大人がこれらの作品を読むとき、自分がどのような人生を歩んできたか、考えさせられると思う。子どものころに、大人のダメな部分を見て、ガッカリしたり、憤りを感じたりしたことを思い出した。しかし、私は子どものころの私が思い描いたような、まともな大人には成長できなかった。これから巻き返しを! (渡”邉恵’里’さん 30代・その他の方 )
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