今や、ADHDやLD、アスペルガーを含む発達障害者は、17人に1人といわれています。
しばしば、「困った子」といわれてしまう彼ら。
けれど、彼らは、困った子、ではなく、「困っている子」なのです。
この本は、知的障害を伴わない自閉症、アスペルガーについて、書かれている本です。
授業中、いきなり教室を抜け出す子。誰もがわがままだとしかとらないでしょう。
けれど、彼(彼女)にとって、先生の立て板に水のごとく話す言葉は、「スワヒリ語」なみに理解不能の言語なのかもしれません。(スワヒリ語をよくご存知の方には申し訳ない表現です…すみません)
いつもと違う、課外授業についていけない。この子は、いつもと違う流れを、大変不安に思っているかもしれません。
けれど、そういう子供も、絵に描いて説明してやったり、やることの順序を前もって教えたり工夫してやれば、見事に才能を花開かせることができるのです。
アスペルガー当事者である、翻訳家のニキリンコさんと、作家の藤家寛子さんが共同でお書きになった本を、以前読んだことがあります。
これは、とても大変かもしれない、と私は感じました。
自閉症は、心の病ではなく、うまれつきの、脳の機能の障害なのですが、私たちが考えも及ばない苦労が、彼女たちにはあるのです。
誰が、普段私たちが普通に行っている体温調節が出来ない人間がいる、と考えるでしょうか。
誰が、嗅覚の敏感さゆえに、世の中は悪臭に満ちている、と感じる人がいると考えるでしょうか。
皮膚の感覚が過剰に敏感で、雨があたると、非常に痛い、と感じる人がいると、誰が思うでしょう?
「お客様の声をおきかせください」と書かれたホテルのメッセージを読んで、「意見や感想」と求められているのだな、ときづかず、「ワー!」と声をあげてしまう人がいると、あなたは考えられますか?
(自閉症者は100人いれば100通りなので、不具合は人によって違いますが)。
アスペルガーや自閉症の人は、そんな不具合を持ちながら、時にはわがまま、とののしられ、ときにはぐず、と非難されながらも、一生懸命生きているのです。
ニキさんは、電車が到着するので、三列に並んでお待ちください、というアナウンスがあった場合、
1人しかいないのに、三列になんて並べない、と非常に不安になるそうです。
(言葉をそのままとってしまう為。ハイパー律儀とニキさんはおっしゃっています)
藤家さんは、「お父さんがなくなったら、この置物を頂戴ね」と言ってしまったことがあるそうです。
それは悪意があったわけではなく、「もし死んだら」というたとえ話が、人を傷つけると思わずに言ってしまったのです。
私たちが、言葉も風習もよく分からない外国に来たら、誰でも不安に思うでしょう。
そんな時にガイドになってくれる人がいたら、どんなに助かるか。そう考えると分かりやすいかもしれません。
私たちは、困ったり、不安に思っているアスペルガーの方がいれば、
「1人の時は、三列に並ばなくてもいいのよ」
「人が死んだらっていう、たとえ話は人を傷つけるからやめようね」
とガイドしてあげることが出来ると思います。
彼らは、そうしてあげるだけで、ずいぶんと生きやすくなるでしょう。
自閉症は、とても複雑な障害(障碍)だそうですから、
私がこうして書いたことに、認識の間違いがあった場合は申し訳ありません。
この本はとても分かりやすい本だと思いました。学級に一冊あれば、誰でもガイドになれる、とてもよい本なのでは、と感じました。