言葉は不思議だ。
何かを伝えたい時に使うのも、言葉。何かを教えてくれるのも、言葉。何かを足したり引いたりするのも、また言葉。
2015年に亡くなった詩人の長田弘さんは、言葉について「辞書にある意味が全部じゃない。自分で自分用に自分だけの辞書もつくってみよう」とおっしゃった。
そんな長田弘さんが「語りかける辞典」がこの本だ。
かつて長田さんの『最初の質問』『幼い子は微笑む』を共に作った画家で絵本作家でもあるいせひでこさんが、長田さんの「ことば」にたくさんの絵を添えている。
この本の元になったのは、読売新聞に2004年12月から2015年5月、つまりは長田さんが亡くなる直前まで書いていた、「こどもの詩」の選評に書かれていた文章から抜粋されて出来上がっている。
例えば、「声」という言葉に、長田さんはこう書いている。
「いつからか、みんな声が低くなった。言葉が聞こえにくくなった。なんか社会全体が声変わりしたみたいに。」
どんな詩に、いつ書かれた選評からのものかわからないが、2020年のコロナ禍でもこの言葉は通用する。
いい言葉は、決して古びない。
もう一つ、決して古びないし、なくしてはいけない言葉。
「平和」という言葉に、長田さんは書いた「ことば」。
「「平和」って、「いい一日」のことなんだ。」
なんだか、空の上から長田さんが今でも呼びかけていそうだ。