リンゴちゃんはリンゴのぬいぐるみです。
まず表紙に、リンゴちゃんの全身が描かれていますが、黒目の部分がないデザインのぬいぐるみで、なんとなく怖さを感じます。背表紙のリンゴちゃんが、腰に手を当てて口をへの字に曲げ、歯を剥いているせいもあるでしょうか…
その印象のままページをめくり、読み進めていきますが、リンゴちゃんの言動はやっぱり怖くて、物語の中盤までずっと、リンゴちゃんは怖いという印象です。
リンゴちゃんの持ち主、マイちゃんは、リンゴちゃんを怖がり、されるがままになっていますが、ある時点で、恐怖は怒りに変化し、リンゴちゃんへの反撃を始めます。
その間、読者もマイちゃんと同じようにリンゴちゃんを怖がり、なんだかもやもやとした気持ちを抱えているような気がします。
ところが、マイちゃんの反撃を見て、勇気が沸き起こり、マイちゃんといっしょになって心の中でリンゴちゃんを攻撃しているのではないでしょうか。
結局、マイちゃんのとどめの一言で、すっかり立場が逆転してしまいます。今までの大きくて強気な態度のリンゴちゃんが、真っ青になり、赤ちゃんのように大声で泣き叫ぶ。その時、マイちゃんの気持ちになってリンゴちゃんを攻撃していた読者も、マイちゃんと同じように、リンゴちゃんの心の痛みを感じ取り、大きくて怖い存在だったリンゴちゃんの幼さと寂しさを知るのです。
ラストシーンで、存在を認められ、愛されはじめたリンゴちゃんは、とてもかわいらしく見えます。
初めはリンゴちゃんを憎たらしく思っていた子どもたちも、リンゴちゃんをウチに連れてきていっしょに遊びたくなるでしょう。
子どもたちも何か心に引っ掛かるものを感じるようで、何度も繰り返し読んでいました。
ちょっぴり怖くて、面白くて、子どもたちの心を耕してくれるような本だと思います。
上の娘が幼稚園児の頃に買った本ですが、今でも「あの本大好きだった」という本です。