いかにライオンといえども、気を抜くことができない、危険がいっぱいなのが野生の世界。子どもの回りにも危険がいっぱいではあるけれど、この絵本はそんなことを言っているのではないでしょう。
ハイエナはずるがしこい動物というイメージがあるけれど、生き抜くための習性なのでしょう。ライオンのあかちゃんを狙おうとすること、守ろうとして駆け付けたおとうとライオン。片目のハイエナに対峙したところを後ろから襲う姑息さをずるいと思ってはいけません。
野生の世界も、子どもたちのいる世界もけっして、テレビドラマのように正義の使者と悪者の話ではないのです。
なんだか、この絵本を読みながら子どもを取り巻く危険を感じ取ってしまった私でした。
駆け付けたおばさんライオンによっておとうとライオンは助かります。そして、危険を乗り越えること、戦いを経験することで成長していくのでしょう。
この絵本の良さは、スピード感とドラマ長のシーン構成。
ハイエナとライオンの対峙。疾走するシーンのスピード感。そして夕陽の中の一族のシーン。それそれが映像としてイメージできる印象の強さ。
この1冊だけ読んでも、存在感のある絵本です。