この物語には主な主人公が4人います。
眞家家の年子の兄弟、眞家早馬と春馬。
早馬の同級生で陸上部仲間の助川亮介、
亮介の幼馴染で調理研究部の井坂都。
それぞれが、それぞれの想いで一生懸命前に進もうとしている姿が、読み終わった後、とても“心地”よかったです。
子どもたち向けの本『児童書や絵本』は得てして、
主人公に特別すごい力
(スポーツ万能だったり、ある種の奇跡的な出来事だったり)があったりして、
主人公が最後に成功するものとして描かれることが多いです。
けれども、このおはなしの一番メインになっている眞家早馬は、
ランナーとしての最終目標である《箱根駅伝》に選手としてでらませんでした。
いわゆる、成功者ではなかったといえます。
なのに、ラストシーンはほんとに気持ちよく読み終えることが出来ました。
早馬の想いが最後の2ページに淡々と描かれています。
特に好きなシーンです。
声を張り上げた喉は、一月の冷たい空気にピリリと痛んだ。心地よかった。心地よかった。この心地よさを、自分は一生忘れないだろう。
この話は《箱根駅伝》のシーンから始まっています。
個人的にお薦めな読み方は、
初めこのプロローグ的な箱根のシーンはサラッと読んでおいて、
(正直、このプロローグを読み始めたときは、
「また駅伝の青春ものか」と、思ってしまいました。ですが、みなさん、ここで本を閉じないで!
“ただの”スポ根青春ものではないことがすぐにわかります。)
後半でまたこのシーンの続きが描かれているところにきたとき、
もう一度じっくり読み直すと、人間関係や、このとき描かれているそれぞれの人物の立場や状況がよく読み取れるので、このシーンは特に2度読みで!
とても読みやすい作品です。読みだしたら、続きが気になって仕方ありません。中学生から大学生くらいの若者にお薦めします。
特に部活でスポーツをがんばっている人や
歌やダンスやお芝居など、人の自分大好きなことを努力している青春真っ盛りの人たちに読んでもらいたいなぁと、思います。
ところで、このところ、2016年に選ばれた夏の読書感想文課題図書をいくつか読んできましたが、
一つ共通点を見つけました。
主流の登場人物がなん人かいて、
おはなしの途中で、語り手である視点の人間が時々交代するものが多かったのに驚きました。
今の書き手(作家)の方の流行なのでしょうか?