学校で詩や俳句、物語の抜粋などの暗唱の課題があり、その中で出会った「走れメロス」の1ページ。
そのときには、どんな場面なのかも、どのような意味が込められているのかもわからなかったのですが、何かぐっと心に迫ってくるような力強さを感じたようで、「走れ! メロス」と、臨場感あふれる声で暗唱していた娘でした。
私も、1冊の本として終わりまでしっかりと読んだ記憶がなく、うろ覚えだったので、手に汗握る展開に、娘といっしょにドキドキしながら、自然と読む声にも力が入りました。
けれど、文章は原文のままで、「邪智暴虐」「竹馬の友」など最初から難しい言葉が続き、一行ごとに説明を加える必要がある言葉が並んでいたため、小3の子にはいくらなんでも難しすぎるだろうと思っていました。
ところが、娘は私以上に夢中になって身を乗り出し、「次は?次は?」と、どんどん物語の世界に入り込んでいきました。
そして、娘が暗唱したあの有名な文章へと続いていくのですね・・・。
「わたしを、待っている人がいるのだ。・・・わたしは、信頼に報いなければならない。いまはただその一事だ。走れ!メロス。」
本当にここまで来た時には、まるで自分もメロスといっしょに走っているような気持ちになってきます。
娘も最初は、親友を人質に捧げるなんて信じられない、という気持ちで、
「えっ、親友なのに、どうして?」と、理解しがたい様子でしたが、ラストの感動をメロスとともに味わい、読み始めとはまるで違う心に変わっていたようでした。
命を懸ける、とはどういうことなのか、真の友情とは、どういうものなのか・・・普段軽々しい気持ちで使っているそんな言葉に、真の意味を吹き込んでくれる物語です。