『ぼくが一番望むこと』の少年ブッカーの時代より少し前の時代のアメリカ南部の州のお話だと思います。
リンカーンが大統領に就任し南北戦争が始まり(1861年)、「奴隷解放宣言」(1863年)を発表した頃でこのお話が終わっています。
この作品の〈はじめに〉は、お子さんがお話の内容を理解する上で、大変参考になる文だと思います。
「奴隷」という言葉を文字にしたり、音に発したりすることも腹立たしいけれども、この事実を知る上では伝えなくてはならないことだと思います。
“ぬすみ聞き”は、人として決して行ってはいけない恥ずべき行為ですが、自由も人権も与えられなかったエラ・メイら奴隷にとっては、残酷な運命に立ちむかうための精一杯の方法であったということが理解できると思います。
主従関係や醜い差別の様子が、主人公のエラ・メイの生活の周辺から明確に伝わってきますが、当時の奴隷の人々の希望を捨てない力強さや、子どもたちの明るさに少々救われました。
ラストのとうさんの一言は、差別の残る現代にもグサリと突き刺された楔のように感じられました。
高学年はもとより中高生にも薦めたい作品です。