一人の若者が、フランスプロバンス地方の山深い地域に足を踏み入れ、出会った男の話。
若者と男(エルゼアール・ブフィエ)の出会いから、34年間にわたる話です。
厳しい環境に人間社会も荒廃し、自然も瀕死状態の中に男は住んでいた。
家族を失い世間から身をひいて、孤独の世界へ。
ゆっくり歩む人生に、喜びを見いだしていた。
しかし、ここからが彼の人格をうかがわせる行動。
ただのんびりと過ごすより、何か為になる仕事をしたい。
木のない土地に良き伴侶をと考え、不毛の地に生命の種を植え付ける事を決意。
気の遠くなるような作業を黙々とおこなう男(エルゼアール・ブフィエ)。
無口な男の手と魂が、なんの技巧も凝らさずに、長い年月をかけ、作り上げたこの神の御業にも等しい偉業。
魂の偉大さのかげに潜む、不屈の精神。
心の寛大さのかげに潜む、弛まない情熱。
これらがあって、すばらしい結果がもたらされる。
という、結びの文に感動してしまいました。
色を失った世界の描写から、巻末に向かい明るいトーンの色が増えていき、生気と安らぎを取り戻した様子が美しい。
圧倒される内容を臨場感たっぷりに、読者に伝えてくれる素晴らしい絵でした。
“名誉も報酬ももとめない、おくゆかしい行いは後の世の人びとにあまねく恵みをほどこすもの。”
という巻頭の文が、読後心にしみいります。
「“あきらめない。”って、心が強くないとできないね。」と、息子がポツリ。
一週間程連夜、読んでいました。