この本の面白さは、大人にならないとわからないかもしれません。
学生の頃、ビネッテ・シュレーダーの透明感のある不思議な絵に魅かれて読んでみたのですが、絵の美しさから想像していたものとかなり違うお話の展開に戸惑ってしまいました。
二十数年経って、本当に久しぶりにこの絵本を手にとってみましたら、思いがけず、「いい!」と思ってしまいました。
確かにちょっと残酷といえるところもありますが、それは、実態を持った残酷ではなく、物語の展開上の一つの出来事としてさらっと読めました。
むしろ、このシュールな感じを最後まで貫き通した作家と画家の力量に感服しました。
わにくんは、厚みを全く感じさせない裂けた口に、細くて鋭い歯をたくさん持っています。“荒々しく獰猛”というより、“妖艶で危険”というイメージです。
そして、一見酷薄ですが、奥底には熱い気持ちがあることがよくわかります。
これは、多分、子どもにはわからないし、果たして面白いと思うかどうかもわかりません。
高学年以上になって、絵のおしゃれな小道具を見つけて喜ぶことはあるかもしれませんが。
完全に大人のための絵本だと思います。