市川先生がアフリカに心酔しているのが良く解る作品です。
見返しのサバンナに生きる動物たちの様子から素敵。
主人公の少年メトが出会った遠くから来た白い肌の人たち。
その中に小さいクマ(ぬいぐるみ)を抱いた女の子もいました。
短い交流を終え別れた後に、女の子の忘れ物のクマに気付くメト。
車に追いつこうと、必死にサバンナの中をかけるメト。
サバンナの動物たちが、メトの抱えるクマに興味を示す様子も愉快です。
スワヒリ語で表現された動物の名前が耳新しく、それらしい説得力のある響きです。
なによりも、メトの純粋でまっすぐな心根が美しい。
合理的な生活に浸りきっていて、腰の重い私たちの中で薄れかけている“心の熱さ・豊かさ”が、この地の人たちの中には健在です。
動物たちと上手な距離を保ちつつ、自然の恵みを共有しているアフリカの人々の生活信条を伺えたような作品でした。