読んでいてしみじみとしてきたのです。
父親の事業の失敗で後にした自分の故郷。
両親は早くなくなり、結婚したものの離婚してバツイチ。
自分の職場の倒産で居場所のなくなった桃さん。
そんな桃さんが、妙な連絡で身寄りを失ったおばさんの介護にと生まれ育った町に舞い戻り、図書館に勤めることになります。
自分にとって、記憶の中にある原風景。
児童書でありながら、物語は私をがんじがらめにしてしまいました。
桃さんのもとに現れる絵本の登場人物は「はだかの王様」「おおかみと七匹のこやぎ」のオオカミ、「うりこひめ」のあまのじゃく。
それぞれに人を探してほしいと、変わったリクエスト。
忘れられない自分に大切なものをさがしている利用者(?)のために、桃さんはレファレンス(ではなくて人生相談)に力を貸すことになります。
自分の思い出で忘れることのできない人を訪ね歩きます。
そして、この物語そのものが桃さん自身のためだったということを知ります。
自分の生い立ちと、父と親族。
これって、子どもには難しいんじゃないのと思いながら、小さいころから転居ばかりしていた自分の昔にこの物語をなぞらえてしまいました。
多分、この物語は子どもにとっては親への問いかけになるのです。
お父さん、お母さんはどのように育ってきたの?
お父さん、お母さんのふるさとって何?
幼馴染ってどんな人?
そして、どんなお話を読んで育ってきたの?
気づいたら、大人として読み終えてしみじみとしてしまいました。
そういえば出てくる絵本も大人になじみの深い絵本。
自分の中にもこんな話の断片がありそうです。
児童書として置いてあるのが不思議に思えるお話でした。