『星新一ショートショートセレクション11』(理論社)。
表題作である「ピーターパンの島」をはじめとして、18篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。
星新一さんではないが、時々こんなことを考えることがある。
もし、本当にタイムマシンが実現して、例えば江戸時代にタイムスリップしたとしましょう。江戸時代の人たちは未来から来た人と大歓迎してくれるでしょうが、果たして私は彼らの期待に応えることができるのかと。
未来には自動車という便利な乗り物があって、と言ったところで自動車が作れるわけでもなく、インターネットで世界中の情報を知ることができると説明してもパソコンもスマホも持っていなければ何もできない。
傘張りの浪人はまだ傘が張れるが、未来人の当方はそれすら危うい。
つまり、未来人といっても、単に高度な文明を享受しているに過ぎないのだ。
この巻には、これとよく似たショートショートが収められている。
タイトルは「高度な文明」。
ある時、地球にやってきた宇宙船。そこに乗船していた宇宙人はとても高度な文明を持っているようであったが、しばらくすると乗ってきた宇宙船が壊れてしまう。でも、宇宙人がいれば、すぐに作り直せると思ったが、実は宇宙船自体に文明が設置されていて宇宙人には何ひとつできない。
この作品の最後に、星さんはこう書く。
「きみに一本のマッチが作れるか。(中略)文明とは、そういうものなのだろうな」
表題作の「ピーターパンの島」はダーク・ファンタジーとして面白かった。