ありふれた家族が、ありふれた休日に動物園に行く。
ただそれだけのお話なのだが、アンソニー・ブラウンはそのありふれたお話の中にいろいろなものをさりげなく盛り込んでいる。
ドラマ性のない家族情景の中に、家族の縮図。お父さん、お母さん、兄弟。わがことのように思えてくる。
等身大のお父さんの姿は、笑えてしまうのだがしんみりともさせてくれる。
絵本の中に描かれる、動物園の動物たちとその動物を見ている人間の絵には、明らかに違いがあって、アンソニーはその情景を対比させることで人間社会の滑稽さをシュールに描いている。
お父さんのジョークについて行けない家族。あくまで疲れ切った母親の顔。動物園に来ていながら、あまり動物を楽しんでいない子供たち。
周りを取り巻く人間は、動物化していたり、パロディであったり、「あなたちこそ動物園の動物なのですよ」とさりげなく語っている。
アンソニー・ブラウンは不思議な絵本作家である。
夢の中でみた自分の姿、動物園の風景がとても意味深長。
大人受けするような絵本なので、低学年にはあまりうけないかもしれない。