荒川の工場地帯。
1932年から現代(1997年)まで、同じはらっばを通して町の移り変わりを淡々と描いています。
昭和初期から軍国主義化される日本、大戦と東京大空襲、そして戦後から高度成長へと、絵の下の簡単な解説以上に、詳細に描かれた風景は饒舌です。
右から左に書かれていた文字。町中に映画館があった時代。
自分が経験していない時代から、自分の成長に重ねる時代にかけて、時には自分の思い出を掘り返しながら子どもと一緒に絵を眺めました。
この本は、戦争の悲惨さを伝えるものかも知れませんが、歴史の流れによって町がどのように変わっていくかを子どもに感じさせる良い本だと思います。
そして、歴史を描く本の悲しさ。
「現代」はいつまでも「現代」ではないことを伝えなければいけないと課題を残します。
絵本の「はらっぱ」はもうないかもしれない。
背景の空のどこかに高速道路の高架が見えて、町がすっかり囲まれているかもしれない。
この絵本が出されてから12年。日本はさらに変わりました。
ついでながら、子どもたちには伝えたい一言。
「次にこの風景を変えていくのは、君たちたち自身なんだよ。」
いつも一言多いおやじです。