とても哀しい話です。誤解されても何も言わず、口数の少ないひさ。
ひさの素晴らしさは、後から人が知るところとなります。
人によっては、「なんで主張しないの」と思うかも知れません。
不幸せすぎるから。
ひさにとっては、何の救いもない話のように思えます。
でも私は、いわさきちひろさんがこの絵本の絵を描いたことで、とてもおおきな意味を感じました。
ちひろさんは、平和を愛し子どもを慈しみ思想の人でもあるからです。さりげなく描かれたように見えがちな絵に、とてもすごいメッセージを込めています。
子どもたちの姿が、線で整えらるのではなく、絵の具と筆の醸し出す柔らかさで、とても強い存在感を示していることにも感銘します。
感性の絵とでも言うのでしょうか?
ひさを捜す村人達の動き。遠くを見つめる村人の後ろ姿。
風景に溶け込んでしまっているようで、鮮明な子ども達の目。
登場人物のない絵にもメロディがあります。
いわさきさんの伝えたかったのは、理不尽な悲惨さに対して、「考えて下さい、考えて下さい」ということだったのでは。
絵がとても重いから。
この絵本を見て、ちひろさんの絵にとても感動しました。
絵を見て、考えて、受け止める絵本です。