幻想的でシンボリックなお話です。
女の子のマーシャが、親の留守に頼まれた子守をさぼって遊んでいる間に、幼い弟のワーニャが白い鳥たち(白鳥に思えるのですが)に連れ去られてしまいます。
マーシャが弟を連れ戻すお話ですが、途中の舞台がとても不思議。
空き地におかれたしゃべるペチカ。
リンゴが実りすぎて、しなってしまって地面につきそうになっているしゃべるリンゴの木。
しゃべるチーズの土手と周りを流れるミルクの小川。
そして、にわとりの足の小屋に住んでいる魔女のバンバガヤー。
ロシアの民話ということなので、日本の昔話と同じで、ロシアではなじみのキャラクターなのでしょうか。
マーシャが不思議な関門(?)を通り抜けて、見つけたのは金のリンゴで遊んでいる弟のワーニャ。
マーシャは来た道づがら、チーズの土手や、リンゴの木や、ペチカの助けを借りて無事に家に帰るのですが…。
書き方が不気味さを避けているのでなんだか幻想的。
心象風景の中の物語のようです。
バンバガヤーが何をしたかったのかはよくわからなかったのですが、きっと悪役ですよね。
その手下が白い鳥たちというのも、自分の先入観と落差があって、妙に印象的でした。
出久根育さんの絵が、幻想的な物語に様々なアレンジメントを加えていて、とても重厚な絵本です。
お話とともに余韻たっぷりです。
ゆったりとした気分で味わいたい一冊でした。