表紙を見てまず驚く。「10本」という題名の上に大きく「じっぽん」と読みがなが振ってある。「ウッソー、”じゅっぽん”でしょう?!」と叫ぶ母親たちの姿が目に浮かぶ。実際、そう思う人の方が多いらしい。そんな嘘みたいな非常識がいま世間に蔓延していることを新聞の投書で知った。だから江戸の戯作者「十返舎一九」、秀吉の全国制覇への道を拓いた「賤ヶ岳七本槍」、かつて相撲の土俵の周りに立っていた「四本柱」、これらを正確に読める(発音できる)人はどんどん減っているという。
この絵本は翻訳だが、数字の読み方には神経を使っている様子がうかがえる。音読み・訓読みを示し、さらに「7」と「4」の読みがなには注釈まで付けている。常識を、無知や非常識と勘違いされないための予防措置と見た。そこまでしなければならないほど、この国には無知が拡がっている。これだけ教育の重要性が叫ばれ、少人数教育が推進され、学習塾が繁盛する時代にである。
先日、孫たちは数字に付けられた読みがながいくつもあるのは何故だと母親にたずねていた。日本語の多様性を数字から知る絵本とも言えそうだ。それに、文字のない最終ページにも拍手を送りたい。身近にこの絵本を見て育った子とそうでない子の差は、きっと数字の読み方以上の差になって現れることだろう。