【あらすじ】
王様が敷地内の鶏小屋で、ぎゅうぎゅう詰めになっている鶏をかわいそうに思い、外に出してあげた。おかげで場内は大騒ぎ。鶏たちは兵隊に脅かされ、卵を産まなくなってしまう。しかし一個だけ卵を手に入れた王様は、コックに頼んで卵焼きを作ってもらうが、この卵焼きが王様の行状を白状してしまい…
【感想】
おかしな話!平和で暇になったので、王様も軍隊も余計なことばっかりしている気がする。まあ、よその国に攻め込んだり、人が理不尽に死んでしまったりするよりはよほどいいけど、なんとも間抜けなお話で、変な人しか出てこなくて、面白い。
絵本なのに、社会や政治、国家について風刺しているような感じもある。
まあ、長年戦争がないと、王様もだんだんとぼけた感じになってきて、兵隊や家来なども妙なしきたりをくりかえしているだけであって、なんとも滑稽な感じ。
長新太さんの、とぼけた雰囲気で、かつ品がある絵が、雰囲気を盛り上げる。
豪華な感じなのに、ばかばかしさもあって、絶妙なタッチ。一番好きなのは、表紙の鶏がたくさんいる絵。なにかが起きる感じがただよう。
文章も、音読したら面白い擬音語や表現がある。私は黙読したが、誰かに読んでもらいたい。絵本にしては長い文章がついている作品。でも、面白いので、文章の多さが気にならず、最後まで一気に読み切ってしまう。
オチが、大人の話。これって、どうなの?こどもの教育に良くない感じがするけど、でも、どうせどこかでこういうふうなことを学んでいくのだよね。生きるって、いろんな知恵や、時に誤魔化し、方便ともいうけど、そういうことって必要になってくるよね。上手に世渡りするには、こういうことも必要だよね…という感じがする。
なんともいえない読後感だ。国家や政治家、権力者って、こういう感じなのだろうなあ。またひとつ、大人になってしまった。