回想の形で書かれたこの話。とてもドラマチックで、気がつけば話の中に入っています。私はこういうお話大好きです。これは一時の夢だったのでしょうか? それともで現実? そんなことも考えながら・・・
山小屋に戻る途中、鉄砲を持ってぼんやり歩いていたら道に迷ってしまいます。この時から不思議な世界に入ります。
見慣れた杉林なのに一面桔梗の野原、怖くなって引き返そうと思っても、足を踏み入れてしまいます。どんどんこの話に引き込まれます。
仕留めようと追いかけた白い子狐を見失った時、そこは染め物屋、男の子の店員に出会います。さっきの子狐が化けたんだと思っても、だまされたふりをします。話のやりとりが続き、どんどん話に入って行きます。
この男の子は自分の正体をばらしてしまっても、二人のやりとりは続きます。 その時この二人に、亡くした人への思慕という共通の感情があるのです。
男の子は「ぼく」にも同じように指を染めてあげて、その指で作った窓は懐かしい人を写し、男の子はお礼に鉄砲を貰います。
鉄砲を持った人間を一人でも減らしたかったのでしようか・・・それとも精一杯の抗議でしょうか・・・
小屋に帰った「ぼく」は無意識に手を洗ってしまい、現実に戻されます。もう一回会いたくても、その染め物屋にはもちろん会えませんし、指で窓を作っても懐かしい人にも会えません。そしてもう鉄砲もないのです。この経験で指で窓を作るくせがついた「ぼく」は二度と鉄砲を持つことはないと思います。じーんとくるお話でした。