本を探しに本屋さんや図書館に行くと、背表紙で出会うことがほとんどだ。視線が通り過ぎて、二度と出会えぬ(出会わぬ)本もある。
だから、目線が「はた」と止まった本とは運命的な出会いをしたことになる。私はいつも友人に「人との出会いと一緒なの」と説明するのだ。
この本も、やはり私にとっては大切な出会いの本の一冊となった。
だが、私にとって素晴らしい出会いでも、他の人にそうであるとは限らない。だから、本を紹介するときは結構気を遣う。
小さな地域図書館内で、ボランティア仲間の友達に、この本を紹介したときも周囲には随分気を遣って、声のトーンを落とし、やや早口で語ってしまった。すぐそばに、初老のご婦人が座って本を開いておられたからだ。お邪魔になっては・・・と思いつつも、私は主人公の男の子の
優しい心が周囲に伝わらない切なさと、気づいた担任の先生への感謝の気持ちと、短冊の祈りを信じて「もっと良い子になる」と誓うこどもの純真さを、何とか友達に伝えたいと願いつつ話し終えた。
話し終えたとき、私たちにずっと背中をむけていたそのご婦人が、くるりと体の向きを変えられて「よいお話を聞かせていただいて、ありがとうございました。」とお辞儀をされたのだ。私は、なんだかジーンとして涙がでそうだった。
名前も知らない、初めて出会った人とお話(本)を通じて心を寄せ合ったひと時だった。「おこだでませんように」と出会った素晴らしさと、背中から伝わった想いを大切にこれからも読み語りを続けていこうと思った。