幼児の僕が部屋の扉を開けると、蝶番のきしむ音がする。見てみると、変なお化けが挟まっていて、「痛い、痛い」という。蝶番が動くたびに挟まったお化けは酷く苦しむ。どうにか助けてやりたい少年だが、どうにもならない。更に、扉だけではなく、椅子の金具や公園の遊具、乳母車、自転車…あらゆるところに、お化けが挟まって苦しみを受けている。しかし、それが見えるのはこの少年だけらしい。
そんな少年がその後どうなったかは、わからない。
誰も気がつかないで、何気ない動作で多くの異界の存在を絶えず苦しめているという構図が、恐ろしい。自分は、何かをする時に、何かがその事で犠牲になっているのではないか?あるいは、知らない間に、どこか妙な場所に挟まってしまい、絶え間ない苦しみをうけることになってしまうのではないか?いずれにしても誰も気がつかない、誰も助けてくれない。まだ知らない場所にいるお化けが、どういう状況になっているのか?…いろいろな恐ろしい想像が働いてしまう作品。後からゆっくり狂気の世界に引きずり込まれるような、恐ろしさを楽しめる。