数をかぞえそこなう、単なる間抜けなお伽話なんかではありません。いなくなった一人を誰も責めず、やさしさを褒め、勇敢さを讃え、家族思いにまでこころを配る、なんていい村の人々だろうと感心しました。こんな幸せな間抜け、ないでしょう? 私たちが忘れてしまいそうな、共生の一面です。
バレンで印刷したような、素朴で力強い絵がいい。村人の口々から、ぐるぐる吹き出される線が、どこへ行ったやら、どうしても一人足りない仲間を思う不安や混乱を表しているようで、ドキドキします。やさしさには鳥や動物、魚までもが人と楽しくふれあい、勇敢さにはヒョウと堂々対峙する迫力が、そして家族には父母と子どもらの団らん、のどかな家庭が描かれています。
「これ、あの西村繁男の絵?」と気付いたとき、またまたビックリでした。とてもいいお話を、わたなべしげおさん、ありがとう。涙がでました。感謝。