オランダの2004年の作品。
副題に「富を考える」とあり、訳は池上 彰さんですから、否が応にも期待は高まります。
最初の4頁は、ある大きなダイヤモンドの変遷の話。
そして、ユダヤ人のおじいさんが購入します。
時は1938年。
第二次世界大戦の開始前で、おじいさんは、戦争が始まる前に妻と娘をイギリスに連れて行こうと考えます。
その当座の費用の捻出のため、そのダイヤモンドをイングランド銀行の金庫に預けるのです。
でも、妻と娘の反対にあって、そのままオランダに住み続けることになるのですが、おじいさん夫婦は連行されてしまいます。
ユダヤ人に対する迫害のためです。
娘とその夫は、屋根裏部屋に隠れ生き延び、時は流れ、その息子がイギリスにダイヤモンドを取りに向い、物語は終わります。
話の半分は、戦争に纏わるユダヤ迫害の状況が克明に描かれていて、この部分は、なかなか読み応えがあります。
イギリスに渡っていたら、全く違った人生を歩んでいたと振り返って思うのは、人生の無常を多いに感じさせるもの。
でも、ダイヤモンドとの関係が、上手く描かれていないのです。
ダイヤモンドの価値は変わらない、戦争中は紙幣は単なる紙切れになったと言っても、この本の中にはそんな事実は出てこないし、あるのは池上さんの解説だけ。
これで、富を考えると言われても、考えようがありません。
素材はとても良いのですが、何を訴えたいのかがぼやけてしまっている気がしてなりません。
少なくとも、紙幣の価値とかの基本的な知識がないお子さんにはオススメできないと思いました。