『満月をまって』というタイトルと
表紙に描かれた美しいお月様を見て
幻想的な物語を想像しましたが
どちらかといえば ノンフィクションに近いお話でした。
山の中でトネリコという木からかごを作りあげ
それを売ることで生計を立てて暮らしている家族のお話です。
満月の夜を待って
父さんはかごを売りに町へ出かけるのですが
(月明かりに照らされて 道が明るいからだそうです。)
ぼくをなかなか連れて行ってあげないんです。
でも 9歳になったある満月の晩
とうとうぼくも連れて行ってもらえることに。
この後の場面で やっと
父さんがぼくを連れて行けなかった理由が分かりました。
意外な展開に驚いたのと
こんな差別は日本だけではないんだ…と思ったりも。
住んでいる場所や 就いている職業で受ける
なんとも理不尽な差別に心が痛くなりました。
今は残っていない伝統工芸の存在を
後世に遺すためのお話なのかもしれませんが
私にとっては 人権を考える一冊ともなりました。
でも 救われたのは
父さんも 仕事仲間の人たちも
自分達の仕事や暮らしに
自信と誇りを持っていることがわかったこと。
そして ぼくもこの仕事を受け継ぐ決心をしたと思われる場面で
締めくくられていたことです。
美しい満月をめでることができる秋の夜に読んだら
このお話の世界にどっぷりと浸ることができそうですよ。