絵は「よるくま」で知られる酒井駒子さん。
文の湯本香樹実さんは、映画になった小説『夏の庭 The Friends』がつとに有名です。
物語は、仲良しだった小鳥が死んで、悲しみに暮れる熊のシーンで始まります。
小鳥の死を現実のものとして受け止め切れない熊は、小鳥の亡骸を小箱に詰めて持ち歩くようになるのです。
その行為に森の仲間は閉口し励ますのですが、とうとう熊は心を閉じ、家に引き篭もってしまうのです。
ある日、久しぶりに良いお天気に誘われて外に出ると、山猫と出会います。
この出会いから大きく舵を取り、最後は、熊は山猫と旅立つのです。
死という重いテーマを描いた作品です。
大切な人が亡くなった時、誰の慰めも届かないことがあるもの。
やはり、自分自身で立ち直るしかありません。
死というのは、終わりではなく、何かの始まりとは良く言ったもので、熊は山猫との旅立ちが始まったのです。
最後のページの二人の後姿に、明るい未来が期待できそうな感があり、余韻の残る終わり方が良かったと思います。
灰色の紙にモノクロームで描かれた絵は、死というテーマに相応しいものでしょう。
ところどころ、絵がないページがあったり、逆に文章のない絵があるのも、巧妙な仕掛けだと思いました。
子供の読み聞かせというよりは、自らが読んで考える類の絵本です。
対象年齢は難しいところですが、小学校高学年位からが適齢かと思います。