森に探検に出かけた兄弟、てつたくんとみつやくんが見つけたのは、なんと大きな赤と黄色の縞模様の卵!そこから生まれたのは、食いしん坊で臆病だけどとても優しい、不思議な怪獣「へなそうる」でした。兄弟とへなそうるが一緒に森で遊ぶ姿は、子どもたちにとって憧れそのもの。かくれんぼやおたまじゃくし採りに夢中になり、時が経つのを忘れてしまうほど楽しそうな様子が描かれています。
物語は、舌っ足らずなみつやくんの可愛い言い間違いや、へなそうるのユニークな勘違いなど、クスッと笑える場面がたくさん。特にへなそうるが想像した「かに」の挿絵には、大人も思わず吹き出してしまうことでしょう。そして、へなそうるの「ぼか、」という自己紹介やおにぎりが大好きなエピソードなど、子どもたちを惹きつけるチャーミングなポイントが満載です。
この物語は、子どもが子どもらしくいられる「子どもの時間」を大切に描いた作品です。大人の「どうして?」や「なぜ?」といった疑問をよそに、子どもたちは森の中での冒険やへなそうるとのふれあいに夢中になります。そんな無邪気な時間がどれほど短いものであるか、読みながら気づかされる大人も多いのではないでしょうか。
作者のわたなべしげおさんは、ニューヨークの公立図書館で働いた経験を持つユニークな経歴の持ち主で、「しょうぼうじどうしゃじぷた」や「とらっくとらっくとらっく」など数々の名作を生み出してきました。この絵本でも、森の自然や登場人物の魅力をリアルに感じさせるストーリーが見事に表現されています。
「もりのへなそうる」は、4章に分かれた長めのお話ですが、1章ずつ読み聞かせをして楽しむのもおすすめです。特に幼稚園や保育園の年齢のお子さんにはぴったりで、自然の中でのびのびと遊ぶ楽しさや、不思議な生き物との出会いのワクワク感を存分に味わえる作品です。へなそうるとの別れが寂しいかな…と思いきや、最後までほっこりと優しい気持ちにさせてくれる展開に安心します。
子どもたちの「もっと遊ぼう!」という気持ちを存分に満たしてくれるこの物語、ぜひ親子で楽しんでみてください。きっと、あなた自身も「子どもの時間」の大切さを思い出すはずです。