母と父と娘と、ミニマムな私の家族が選んだ一冊です。
小さくても緑ゆたかで、大きな空の下、ちょっと丘で、そばにリンゴの木、
時にブランコを作って遊んだり、そばの池で泳ぐ。
なんたって季節が目の前で変わるのが分かるって、すてきでしょ。
なんどもなんども読んでいるうち、私たちの住む家の周りも、
少しずつ少しずつ変わってしまって、本の中と同じにならないよねと、
心配するこどもに質問されたものです。
町は便利だけれど、くらしの尺度がなぜかしっくりこない。
土の匂い、花のにおい、緑の香り、空の広さ・・・。
う〜〜んと背伸びをして、深呼吸できる家が、どんなにちいさくても、
どんなにおんぼろでも、いいよねぇと、顔を見合わせて相づちをうったのです。
バージニア・リー・バートンの、定点観測のような構成が、
ちいさな家をより際立たせます。
いつも画面の真ん中にあるちいさい家の表情が、画面の後奥からどんどんやってくる何かに翻弄されて、読む者のこころをザワつかせるのです。
最後の夜のシーン。新しい田舎の丘に移ったちいさな家は、
やっと安堵してしずかに眠るのです。
人間が騒がしくして、ごめんなさい。
でも、すべての現代人に通用するかどうかは、自信はありません。
身の丈を知るバートンさんに、同情感謝です。