ラブラドールの子犬クイールが、盲導犬になるまでの3年間を写真で追った絵本。
「ベルナの目はななえさんの目」で初めて盲導犬の存在を知った娘は、盲導犬が厳しい訓練を受けて、目の見えない人の「目」となり、全身全霊を捧げて辛苦を共にしながら、大事な家族となっていくこともよく理解していました。
でも、訓練所に行くまでの1年ちょっとの日々・・・生まれてからお母さんや兄弟と過ごす束の間の時間、そして、人間に愛され、愛することを学ぶために、育ての親の「おじさんとおばさん」といっしょに過ごす1年間・・・については、この本を通して新たに知ることとなりました。
お母さんのおっぱいに小さな鼻を押し当て、懸命に吸い付いてる生まれたばかりの子犬たち。うちにも、ブリーダーからもらった同じ写真があります。うちの犬は、その後まもなく、お母さんの元から直接我が家にやってきて、以来ずっと私たち家族といっしょに暮らしていますが、クイールは、最初からたった1年だけという約束で、「おじさんとおばさん」の家に預けられます。そのおじさんとおばさんの表情の和やかでやさしいこと! 本当に我が子を見つめる温かい眼差しです。どの写真も、笑顔、笑顔。クイールも心の底からうれしそう。
そして、楽しい時間はあっという間に過ぎていき、再び「おとうさんとおかあさん」とのお別れの時が訪れます。
「クイール、きょうは おもいきり さんぽしようね。」・・・クイールが大好きな散歩を、いつもよりずっと長くしてくれました。そして、何度も何度もクイールを抱きしめてから、車に乗せました。
ここの箇所を読むときにはいつも、胸がいっぱいになって、涙で声が詰まってしまいます。愛情を一身に受け、何の心配も不安もなく、ただただ無邪気に駆け回り、甘えていたクイールの子犬時代は、今日を境に終わってしまうんですね。
けれど、ほんのわずかな短い間でも、愛される喜びを心で味わったクイールだからこそ、その後の厳しい訓練にも耐えることができ、盲導犬としても立派に役目を果たすことがかなったのでしょう。人間の子どもも同じですね。幼い頃にかけてもらった愛情は、生涯の宝になることと思います。
クイールは、「めのみえないおじさん」の「こころからのともだち」になりました。どんなときもふたりはいっしょです。
娘は、我が家の愛犬のことを考えながら、「○○は、『まて』って言っても、すぐに『ひーん、ひーん』ってないちゃうよね。」とか、「びゅーんって引っ張っちゃうから、目の見えないおじさんが転んじゃうね。」と、盲導犬になるための厳しさを実感していたようでした。