毎朝起床時にするパパとのノックノック・ゲーム。
父親との楽しいコミュニケーションの時間は、主人公の少年にとってこの上ない喜びだったのでしょう。
ところが、ある朝からパパはドアをノックしなかった。
学校の支度も手伝ってくれないし、スクランブルエッグも作ってくれない。
宿題も教えてくれない。
パパは、いないのだから。
少年は、学校に行っている間にパパが帰って来たらと考え、手紙を書きます。
ドリブルのやり方もひげのそり方も教えてほしい。
車の運転や修理。
まだ、たくさん教わりたいことがあるのに。
かえって来てほしい。
ぼくはパパみたいになりたいんだ。
でも、パパがどんなだったか、忘れてしまいそう。
最後の2行に似は泣かされます。
数か月後、父親から返事が、・・・・・・。
この父親の返信にも胸が締め付けられる思いがします。
おまえのドアをわたしがノックすることは、もうないだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・ノックしなさい。おまえの ゆめに つながる あたらしい ドアを。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ノックしなさい。わたしの むすこだということを わすれずに。輝かしい未来が開けることを信じて。・・・・・・・・・・・・・。
父親の返信内容と共に、少年が成長し成人し、就職し、結婚し子どもを授かり・・・・という様子がコラージュ仕立ての絵で見事に描かれています。
作者の経験を元にした作品のようですが、子ども心に親を失うという経験は、常に子どもの胸の内に消化しきれない想いとして残っていくのだと思います。
父への思慕、どうやって大人になっていけばいいのかという素直な戸惑いの言葉が、読者の胸を打つのだと思いました。