1954年3月1日、マーシャル諸島のビキニ環礁で、アメリカ国防総省が行った水爆実験。付近の海で、漁をしていた第五福竜丸は被爆した。その様子を「石に刻み付けるような」線で表現した絵本。
巻末には作者の経歴と、水爆実験などのあらましが書かれている。
「絵本」というメディアを通して、歴史的な出来事をいろいろな世代に伝えている。映画や大人向けの本のように、生々しく直接的な表現ではなく、ニュース番組のような扇情的で過激なやり方でもない。
原水爆の実験が、どうして必要なのか私にはさっぱりわからないが、これが何度も繰り返されているという。一体何に使うのか?宇宙人が攻めてくると本気で思っているのか?
(もし本当だったら、私は諦める)
巻末には事件の詳細が書かれており、第五福竜丸にも、ビキニ環礁付近で暮していた住人たちも、生き物たちにも全く落ち度はなかった。作者たちもいったい何に水爆を使うのか疑問だという意見を直接表現している。水爆だけではなく、どうして戦争をするのか?という思いも出てくる。人類は戦争や強力な兵器の開発を行って他者を支配し搾取し続けている。その愚かさと、どうしてそれを止めることができないのか?という疑問が、この1冊の本を読むことで、改めて考えさせられてしまう。
戦争が地球からなくなり、核兵器もなくなり、世界が平和になって、問題は話し合いで解決するなど、もっと人類がましな行動をとるように!と祈らずにはいられない。
読んでいて辛い気持ちになる一冊だが、敢えて読む必要がある本だと思う。