文字はひとつもありません。絵だけの絵本です。そのせいでしょうか、想像ががふくらみます。
少年が海でひろったカメラのなかのフィルムを現像してみると、思いもよらない画像ばかり。機械仕掛けのタイ、ソファに座って読書を楽しむタコ、フグの気球……。
そのなかに一枚だけ、少女の写真が入っていました。よく見ると、少女が手にした写真の中には、やはり写真をもった少年が写っていて、その写真の中にも……。限りなく少年、少女の写真が続いているようでしたが、最後は写真を持たない一人の少年が写った白黒の写真でした。
このお話のすごいところは、何代にも渡って、カメラが子どもから子どもへと引き継がれていることです。もし、このカメラを大人がひろったらどうなるでしょうか。これは、愚問ですね。カメラは、子どもにしか届かないのです。それも、このカメラの秘密に気づき、次の子どもに届くようにと海に返そうと思う子どもにしか。
もし、あなたがカメラを見つけたら、どうしますか。いや、あなたはカメラに選ばれる自信がありますか?