タイトルは、「さんこ」と読みます。
本当の名前すらわからない、大男の呼び名です。
オイダラ村の村人の困っていることを人知れず解決してくれる三コ。
ある日、オイダラ村のオンチャが困っていることを知ると、姿を現し、
親身になって解決しようとします。三コもまた、オンチャだったから。
オンチャの為に土地を増やそうと、オイダラ山を海へぶち込もうとする
三コのシーンがとても面白く表現されています。
ヒイーッ ヒイーッ と泣く海。
人の肩にのったことがなく、下ろしてくれ〜と泣く山。
笑う雲。
結局、違う形でオンチャの問題は解決するのですが、このシーンが
私の中では結構お気に入りです。
方言だからこそ、良かったのかなと思います。
ところが、オンチャのために解決したはずのこのオイダラ山が山火事になり・・・
胸騒ぎでそれを察する三コの姿の描写がとても素晴らしいです。
オンチャの為に。村人のために。
燃えさかるオイダラ山に覆い被さり、自らの命を捧げて死んでいく三コ。
後半数ページは、オンチャの気持ち、三コの気持ちが心に滲み入るようで、
黙々と読みました。山火事をくい止める為とはいえ、哀しい結末です。
ただ、三コの意志を継ぐオンチャがたくさん育ったのが救いです。
私とは別にこの絵本を読んだ息子が一言、「三コって、”花さき山”に出てきたよね?」と。
慌てて「花さき山」を見返してみると、確かに三コの名前がありました。
ちなみに、「花さき山」には、「八郎」も出てくるんですよね。
お話が絵本の中でリンクしていることを知り、斎藤隆介さんの作品が
より楽しめたように思います。