「おおきなトラとシカのはんぶんくん」 自信を持っておすすめしたい みんなの声

『HALF AS BIG AND THE TIGER』が原題。
トラの作品としてセレクトしたのですが、なかなか滋味深い作品でした。
３頭のシカの兄弟の末っ子は、兄さんの半分ほどの大きさだったので
「はんぶんくん」と呼ばれているのですが、なかなかのネーミングです。
体格的には劣っているのですが、実は智が立つ展開が愉快です。
ある日、大きなトラがやってくると、はんぶんくんがその力を発揮するのがかっこいいです。
もちろん、堂々とした勇気があってのこと。
この迫力にビビってしまうトラの様子が愉快愉快。
小さくても、賢くて勇敢であることの爽快さを満喫できます。
オレンジの背景色に、茶色の絵が何とも滋味深いです。
トラとシカを描くのにいい塩梅です。

「はんぶんくん」という変わったタイトルに惹かれ、手に取りました。
大きく立派なお兄さんに比べ、大きさが半分しかない末っ子シカのお話。
力もないし足も早くないけれど、その賢さと勇敢さで、大きなトラを何度も撃退するのでした。
生きるために必要なのは、力でもスピードでもなくて、知恵と勇敢な心なんですね。
オレンジ色と茶色の濃淡のみで描かれたイラストですが、動きや表情がとても豊かで感激しました。

この絵本で１つ気に入らないところがあります。
「半分くん」というニックネームは、いじめに使われそうな表現に思えるからです。
人の半分しか能力がないだなんて、そんなレッテルを貼られたら、跳ね返せない重圧が感じられます。

それはさておいて、この「はんぶんくん」は、大きなトラに襲われた時、開き直りか豹変しました。
ヒョウになったシカは、トラより強いのです。
豹変した「はんぶんくん」の武器は勇気と知恵でした。

それは、力がなくても、速くなくても、姿では見劣りするシカを、気高く大きく見せてくれました。
スーパー・エリートではなくても、英雄になることができるのだと教えられたように思いました。

そんな意味あいから、訳者はあえて「はんぶんくん」と読んだのでしょうか。
イジメを受けている子へのエールかも知れません。

はんぶんの　大きさのシカ　　三番目の弟のシカだったんです
一番上の兄さんは　　大きくて力持ち　
二番目の兄さんは　　早足で　みんなに危険を知らせる役目
はんぶんの大きさのシカは　とりえがないのかな？
いえいえ　智恵のあるシカだったんですよ

森に　大きなトラが　やってきた
そのトラに向かって
なんと言ったと思いますか　堂々と　おおきな声でね
「おい、トラ！　ぼくに　かかってこい！」
トラは　こんなに堂々としているのには　訳があると考えたんですlって・・・・

このトラ　なんとも　とんまなトラです　　顔も怖くないんです
かわいい顔してる

トラを　やっつけた　賢い　小さな　シカのはんぶんくん

智恵があると　大きいものにも勝るということわざのようなお話でした