イ・テジュンの1938年の作品に、キム・ドンソンが絵を描き2004年に発刊した韓国の絵本。
主人公のぼうやがてくてくやってきて、路面電車の停車場によじ登ります。
電車がやってくると、ぼうやは運転士に尋ねます。
「ぼくの かあさんは?」
運転士は答えます。
「知らないな」
その繰り返しなのですが、いつしか、ぼうやは「まちぼうけぼうや」として知られ、運転士に、じっと待っていなさいと言われるのです。
その町並みの風景が、古き日本を偲ばせるものです。
ぼうやの衣装がそれほど違わなければ、日本の古典的作品と言われても、おそらく納得してしまうような気がしました。
ぼうやは、じっと待ちます。
雪が降り、辺りが暗くなっても待ちつづけるのです。
かあさんを待ちわびる純粋な気持ちは、心の琴線に触れるもの。
その感情を暗示するような絵が、実に素晴らしい。
そして、何と言ってもラストのページが秀逸です。
雪が降り積もる町並みのまん中の細い階段を、かあさんと手を繋いだぼうやが、お互いを見つめ合いながら歩いているのです。
良かったという一言では言い尽くせない、やるせない思いが募ってしまうことでしょう。
この絵本は、間違いなく大人向きの絵本です。
子供のことで悩んだ時に、一寸読んでみると、視界が広がるようなそんな作品だと思います。