百年ほど前のパリの街、そこでの出会いと絆の物語。
ミレットは、パリで一番の宿の娘。世界中からやってくる旅芸人がゆっくり寛げるよう、一生懸命に働きます。 ある日、この宿に沈んだ様子の男の人がやってきて滞在します。引退した綱渡り師と名乗ったその人は、中庭で綱渡りをしていました。その様子を見ていたミレットは足がむずむず・・・。自分も綱を渡りたくてたまらず、練習を繰り返し、教えを乞い、綱の上で宙返りができるまでになりました。
男の人は「神業のべリーニ」と呼ばれたすごい綱渡り師でしたが、一度、綱の上で恐怖心を持って以来、ショーを行うことができないでいたのです。しかし、ミレットの期待に応えるために意を決したべリーニは・・・。そして、恐怖心をなんとか乗り越えようとしているべリーニの姿をみたミレットは、自分も綱の上におどり出ます。
年の差や経験値を越えて、同士としての絆を感じるこの二人の綱渡りの場面では胸が一杯になりました。満天の星空の下、綱の上にいる二人の喜びと真剣さ。見ているものにとっても息詰まる時間です。この二人の綱渡りが成功したかどうか、その先どうなったかは、最終頁に描かれたポスターがすべて物語っています!
1993年度コルデコット賞、1992年度ニューヨークタイムズ・ベストイラスト賞、受賞作品。