ノンフィクション作家柳田邦男さんは「絵本は人生で3度楽しめる」という。
3度とは、幼い頃、子育て中、そして人生後半。
絵本といえばなんとなく幼い子どもが読むものと思いがちだし、それは決して間違っていないのだが、人生100年の時代に幼い頃のたった一度の出会いではもったいない。
特に人生後半、さまざまなことを体験したあとだからこそ、絵本が持っている純粋なものを再度味わうことに深い意味があるように思う。
絵本論を勉強したい人の入門書、あるいは絵本に関心のある人が学ぶベーシックなテキストとして2013年に刊行されたこの本は2019年に初版第4刷として出たことからすると、根強い読者がいるということだろう。
この本では絵本についてこう定義づけされている。
「ことば、文とイラストレーション、絵が相互に有機的に連動し響き合って、物語世界を表現する視覚伝達媒体」。
そして、「絵本は子どもが人生の最初に出会う本」で、「心の栄養」になる、と。
この本は、「絵本論の基礎的事項についての体系的な解説」である第一部と、「絵本論を学ぶための必読の絵本60冊」を紹介する第二部で構成されている。
名作絵本60冊は「海外の絵本」が35冊で「日本の絵本」が25冊となっている。
日本の絵本作家のすそ野が広がりつつあるから、今後名作絵本の占める「日本の絵本」も多くなるだろうが、そのためにも絵本論をしっかりと学んだ人の選択眼が必要になるだろう。
そして、その時には人生後半の読者にはどういう絵本がすぐれているのかといった配慮も必要になると考える。