グリム童話『七わのカラス』を二人の作品で鑑賞しました。
グリムの話自体が怖い内容なのですが、ツヴェルガーの絵には奥深さを感じました。
多分同時に読んだホフマンの絵と好対照だからでしょうか。
七人の息子たちがいてやっと授かった女の子。
父親にしても、妹ができた兄弟たちにとってもとてもうれしいことだったのです。
身体の弱い娘を洗礼するために、父親は息子たちに聖水を汲みに行かせます。
我先にと走ってたどり着いた井戸で兄弟は聖水を汲もうとしたツボを落としてしまって途方にくれます。
なかなか戻らぬいたずら坊主たちに癇癪を起した父親が「カラスになってしまえ」と叫んだ言葉が、呪文となってしまって息子たちはカラスになってしまいました。
父親にとって息子たちはあきらめるしかない存在だったのでしょうか?
何知らず育った娘が大きくなって耳にした言葉は、娘の心に突き刺さります。
自分のために兄たちはカラスになってしまったのです。
兄たちを助けるために、娘は地の果てまで旅をします。
太陽や月や星たち…。
擬人化された深みのある絵が印象的です。
星からもらった鍵を落としてしまった娘は、兄たちが閉じ込められている山の扉を開けることができません。
そこで自分の手の指を切って、鍵穴に差し込んで扉を開けるのです。
この残酷な行動の痛みが、話の展開の中で出てこないのが不思議なのですが、娘はお兄さんたちの魔法を解くことに成功します。
喜びが痛みに勝ったのでしょう。
幕切れがあっけないので、その後の兄弟の生活と父親との再会のシーンが気になりました。