タイトルは娘の名前と同じだった。
娘の父親が本を手に取ったきっかけはきっとそれ。
そして、その静かだが炎の燃える温度やゆらめきが、手に感じられそうなろうそくの炎の絵に吸い寄せられたのだろう。なんてあたたかな空間。白抜きの文字が優しい。
表紙で満足するも、おずおずとページをめくると、そこにあらわれる一人の少女は、ろうそくの炎のように優しく静かで、きちんとしたたたずまいの人。
ひたすらつつましく日々を送り、運命を受け入れ、やがて自分の中の大切なはかないものをどこかに落としてしまったことに気づく。その涙は美しく、せつない。
けれど、気づいた刹那、再びろうそくのあかりが、彼女のもとによみがえり、あたたかく包む。
何か悪いことをしたわけでもないのに、人はその人生につまづき傷つく。悲しみにくれながら過去を振り返ったとき、人は思いもかけぬ贈り物に気づく。人生の歩みの最初のページに与えられるあたたかい家族のぬくもりや、子供にしかわからない自然の奇跡に。
この絵本は、ひとりでも健気に生きている多くの少女におくりたい珠玉の1冊だ。