幼いころから野生の生き物が好きで、獣医師として働きながら、作家活動をしているイギリスの作家が書いた作品です。
2016年の「第62回青少年読書感想文全国コンクール」中学生向き課題図書の1冊に選ばれました。
主人公のノラは7年生(中1のようです)、英語圏には多い難読症(ディスレクシア)を持っています。ノラのお父さんもまた同じ障害を持っていて、ちゃんとした働き口を持っていません。
最近、児童文学と呼ばれる分野の海外作品の中に、この障害を持っている登場人物が多く登場するようになったような気がします。
(それだけ、世間からのこの障害の認知度が増し、英語圏では一般的に受け入れられる社会になってきた現れなのかもしれません)
日本語訳はさくまゆみこさんで、とても読みやすい文章です。
本文は289ページ。作者の後書きとイルカについてのミニ知識部分を入れても294ページとやや短めです。
イギリスの海岸近くの小さな町が舞台です。
主人公のノラはお父さんも行方不明になったお母さんも大好きで、自分が育った町の海や海の生き物たちを大切に思っている女の子です。
性格の悪い同級生のジェイクがノラのディスレクシアをからかったりするので、ノラは中学校生活を楽しめていません。そんなとき、ロンドンから脳性麻痺のため上手く歩くことが出来ないフィリクスが転校してきました。
この町はサンゴ礁が豊富で魚や貝が集まるため、漁業が盛んなようですが、行き過ぎた漁業が生態系を乱します。
ジェイクの父親:タギー・エヴァンズは町の実力者(底引き網漁の会社を経営している)で、彼が漁のために設けた網にイルカのあかちゃんが引っかかって大けがをしたことで、物語は一気にクライマックスへと加速していきます。
ラストは大円団とまではいかないまでも、これからに希望が持てる終わり方で、読了後の気分はよかったです。
まさに中学生くらいのお子さんたちにお勧めしたいです。
海のお話ですし、この夏休みにぜひ、いかかでしょう。