マーシャ・ブラウンの絵のせいでしょうか、この上なく理不尽な逆境ドラマに思える物語です。
何故に11人の兄弟と末の妹のエリザが、これほどに苦しい試練を受けなければいけないのでしょうか。
陰湿な苛め社会のなかで、必死に救済を求めるような、そんな構図がブラウンの絵に示されています。
継母の策略に揺らいでしまう父親の愛情、世間の言葉に呑まれてしまう王さまの妻への愛情…、童話でありながら昼ドラのようなドロドロしさを感じてしまいました。
このような展開が物語の世界だけであってほしいと思うほど、屈折した現実社会の社会病理をまで思い起こしてしまいました。
この物語を他でも読んでいるのですが、こんな思いになったのは、ブラウンの絵と物語で描かれた文章のディテイルのせいでしょうか。
そのなかでエリザはとても健気です。
最後に救われるくだりでは、心の底からほっとしました。
余談ですが、物語の中で書かれている「国の半分ほどもする、美しい絵本」って、いったいどんな絵本なのでしょうね。