原作は1968年、日本での出版第1号は1975年。少々レトロなタッチの世界が、ふっくらとした温かみを感じさせる。
百貨店しか知らない世間知らずのコールテン君は、なんと、自分のボタンがとれていることも、お客さんの指摘されるまで気がつかなかった。なんとものんきだ。彼は今まで売り場でどういう風にすごしてきたのだろうか?なんだか長年ぼーっとしているうちに、人生が半分くらい終わってしまったような雰囲気を感じさせる。
「友達」と出会った後の、彼の行動は実に迅速で大胆。人との出会いは、このようにドラマチックに人生を変えてしまうものだろうか。それまで見たこともないものを見て、やったことのないことをやった彼の冒険は、驚きと楽しさに満ち満ちていただろう。エスカレーターを「山」だと思ったり、家具売り場を「御殿」だと思ったりするあたりが、スケールが大きい大人になりそうな雰囲気が感じられる。
「ずっと前から、〜をやってみたいと、思っていたんだ」という彼のセリフに、何事も前向きに受け止めていく素晴らしさが現れている。
見習うべき「くまのぬいぐるみ」である。