「えほん 世界のおはなし」シリーズの5です。
文を「ころわん」シリーズでお馴染の間所ひさこが担当しています。バーナデット・ワッツの絵が細かいところまで丁寧に描かれており、とても美しいです。
散々いじめられたあひるの子が白鳥の群れに近付く時に「さあ、ぼくを ころして ください!」と言います。息子は「どうして 『殺して下さい』って言うの?」と聞きました。
「今までいじめられてきたからね、今度もひどい目にあうと思ったのね。でも、白鳥が美しいから、殺されてもいいからそばに寄りたいと思ったのだと思うよ」と答えました。
子どもの頃に読んだお話ではありますが、こうして読み返してみると、こんなに痛切な言葉があったとは知りませんでした。胸にせまるものがあります。
生まれた時からいじめられ、住む場所もなく、放浪しなければならなかったあひるの子。醜いと言われ続けて迫害されるのは、とても苦しかったことでしょうね。
前半部分が辛く苦しいお話だけに、後半の幸せがかけがえのない幸せに感じられます。
アンデルセンの頃は、貧しさゆえの差別や迫害があったのかもしれませんが、豊かになった現在でも、いじめはなくならないことを思うと、この絵本の必要性や長く読み続けられてきた理由がわかる気がします。
名作絵本ですので、この絵本でなくてもいつかどこかで、子どもたちが読んでほしい本だと思います。