肩肘を張らない内容が、いい。
私たちのほとんどは、クラシック音楽を特別扱いして「教えられ」「聞かされ」てしまった、そんな気がしてならない。勉強のひとつとして、「学び」始めてしまったのかもしれない。教室の壁に仰々しく飾られた、あの爆発した髪型の、あの偉そうな、歴史上の「作曲家」として以外に、いったい何を楽しんだ記憶があるだろう。
切り絵の挿絵が、音のない世界を、歌ってくれる。
ベートーベンはそうか、こんな時代に生まれて、こんな家族に育てられ、くらしの中でこんな風に考えて、恋をしたり苦しんだり、耳を患い、生死を悩み、それで表現したかったんだこれを。ああ、人間なんて、みんな同じなんだ、そう素直に感じた。伝記物の、教科書的な「学び」とはまるで違うものだ。
なんどでも、読みやすい。
音の中に生きる、人間臭いベートーベンを、自分なりにゆっくり、なんどでも噛みしめることができる。彼はきっと、こころの人なんだ、そう感じることが、うれしいし、また楽しい。
おはなししていただいて、感謝。