今年の秋、たくさんお月様関連の絵本を読みました。
月をテーマにあたたまる素敵な絵本にも多く出会いました。
でもこの一冊には、文学の奥深さを感じました。
途中まで読みすすめて思い当たったのは『メアリー・ポピンズ』シリーズで、メアリー・ポピンズが子ども達に語る昔話。
王様と、道化師が出てくる話(帰ってきたメアリー・ポピンズ)と、王様と、本当の知恵とは何かを問う話(とびらをあけるメアリー・ポピンズ)です。
レノア姫のために、王様も賢者(大人)もさんざん頭を悩ましますが、結局答えは出ず、その答えを知っていたのはレノア自身(子ども)。
大人より、子どもの方が真実を見据えている、という、メアリー・ポピンズの作者の伝えていたメッセージ、昔話のエッセンスが、この物語の軸にもありました。
大人の考える「賢さ」と、真実には、ズレがあること、子どもの純粋な心でこそ見えることが、どれほど経験を積んだ大人が考えることにも増してホンモノだということを、物語を通して伝えています。
子どもが「おつきさまがほしい」というのを、単にワガママと捉えるのではなく、月がほしいこと、月は何かと考える知恵、子どもの目に月がどう映っているか(つまりそれは大人の考えにも及ばないこと)、物語を通してさまざまな見方が伝わってきます。
(『メアリー・ポピンズ』の中でもマイケルがお月様をほしいと言って、手に入ります)
メアリー・ポピンズの中でも道化師が王様に知恵を与え(『帰ってきた』)、王様の答えられなかった問いに答えられた賢さを持つものは、老人、夫人、若者でした(『とびらをあける』)。
この2冊は1935年と1943年で、『たくさんのお月様』が1943年なので、この年代にこのようなお話が流行ったのだとしたら、ほかにもこの類のものを読んでみたいと思いました。