この絵本の作者高野文子さんは漫画家です。
2003年には『黄色い本』で手塚治虫文化賞を受賞するなど、多作ではないが、漫画ファンにとって欠かせない漫画家の一人といえます。
そんな高野さんが初めて絵本を描いたのが、この作品です。
高野さんの漫画は子ども受けをする作品ではないのですが、この絵本は「幼児絵本シリーズ」の一作としてつくられています。
どういうきっかけだったのかわかりませんが、高野さんと絵本というのはなかなかユニークな組み合わせだと、私などは思ってしまいます。
しかも、この作品の題材が、敷ぶとんに掛けぶとん、それに枕というのですから、変わっています。
はてさて、どんな絵本なのかしら。
敷ふとんや枕といった日常的に使うもの、といっても最近の子どもたちはベッドで寝るのが多いでしょうから、ふとんと敷くということもわかりにくいかもしれませn。
幼い子どもに読み聞かせる時には、少々アレンジしてあげてもいいでしょう。
敷きふとんたちの役目をいいリズムの文でつづっています。
特に気にいったのは、「まくらさん」のお役目。子どもが枕に「おっかないゆめ」を見ないように頼みます。
「まかせろ まかせろ おれに まかせろ」、枕はもし頭に「おっかないゆめ」がわいてでてきたら、鼻息で吹っ飛ばしてあげると、頼もしいかぎりです。
これは大人の私でも頼みたい。
「おっかないゆめ」を見るのは、子どもばかりではないのですから。
絵の線はいかにも高野さんらしい、ちょっとためらいのある線です。高野さんの漫画が好きな人はこの線がいいのではないかと思います。
それに色使いもいい。
初めて絵本を描いてみて、そういうところに心を配ったのではないかしら。
眠る前にこういう絵本を読んでもらったら、きっといい夢を見るのだろうなぁ。
そして、この絵本を読んだ子どもたちが大きくなって、高野さんの漫画を読むんだと思ったらら、それもなんだか少しばかりうれしい気分になるものです。