幼年童話の傑作「ロッタちゃんのひっこし」の直前に起こった事件を絵本にしたものだ。「ロッタちゃんのひっこし」は、子供の頃に憶えるくらい読んだ本。ロッタの傍若無人振りというか、自己チュー振りも相変わらず。
末っ子でみそっかすのロッタは、じてんしゃが欲しくてたまらない。誕生日にもらえなかったロッタは、お隣のベルイおばさんの物置から「かっぱらう」ことを決意する。まんまと「かっぱらう」ことに成功したロッタは、そのじてんしゃに乗って「もんくやどおり(このネーミングセンスが最高)」を疾走する。
このロッタちゃんにしろ、ピッピ・ナガクツシタにしろ、「やかまし村」シリーズにしろ、リンドグレーンの描く子どもたちはどうしてこうも生き生きしているんだろう。ロッタなんて、もし現実にいたら相当「手に負えない」子どもだと思う。その「手に負えなさ」が子どもの子どもたるゆえんで、それこそが得難い(そしていつか必ず失ってしまう)たからものなんだってことを、リンドグレーンという作家はちゃんと知っている。
成長する前の一瞬の輝きを愛おしく見つめる目。大人になってから読むと、ロッタに注がれている愛情の深さがよくわかる。あのロッタに再会出来て、とても嬉しかった。