赤羽末吉さんの『私の絵本ろん』で紹介されていました。
同じく槇佐知子さんと赤羽さんのコンビの『シャエの王女』が素晴しくてぜひこちらも読んでみたくなったのがきっかけです。
『私の絵本ろん』によると赤羽さんが槇さんの作品が素晴しいということで、作品に合う女流作家を探していたところ見つからず、
赤羽さんが絵を描かれたということでした。
左大臣の姫君が女御に上がる際の婚礼道具として素晴しい硯がありました。
一人の青年がその硯を見たくて誤って割ってしまいます。
青年が恐れおののく様子を見た姫君の13になる弟君が自分が割ったことにするのです。
すべてはこの身代りから始まります。
ただ、題名からも予想される展開はあまりにも悲劇的で、一体この場合どうすればよかったのかと思いました。
『春のわかれ』は、青春時代を送ることなく逝ってしまった若い命のことも暗喩するかように見事だと思いました。
『シャエの王女』同様、文章が流麗で美しく、槇さんには赤羽さんとのコンビで、中高生向けの絵本をもっと出していただけたらと思いました。
親の視点で読むと、左大臣の狭い了見がとても惜しまれるのです。
『今昔物語集』にこのような作品があったとは知りませんでした。改めて日本の古典の良さを見直してみたくなる作品です。