タイトルからは想像できなかった、優しさ満ち溢れるお話です。
大男ボルスという名前から、怪物でも現れるのかと思ったら同じ人間。
ただ大男だというだけで恐れられ追いやられた悲しい男の人でした。
ボルスが村に近づくと、捕まると子どもたちが生きて帰れないなどと大騒ぎが始まります。
誰がそんなことを言い始めたのでしょう。
いい加減な話が広まって、村人の間では本当のことのようになってしまっていたのです。
村人が家に逃げ込んだ後、落ちていた布団を、拾い上げて汚れを落とし、またさおにかけてあげる。
ボルスは、そんな優しい男でした。
女の子がその優しさを見抜いて友だちになるのですが、これがまた人々には誤解されてしまい、寄ってたかってボルスは袋叩き。
それでも抵抗しないボルス。
ボルスの優しさと悲しみばかりが浮かび上がるお話です。
このお話に加えて、絵の優しさが素晴らしい。
はじめは、ボルスの描かれ方が大男らしくなくて違和感があったのですが、木目を背景に溶け込ませた木版画の優しさと、優しい色調に、最初からこのように描きたかったのだと納得しました。
ボルスは化け物ではなく、素朴な優しい男。
タイトルとの落差はあるけれど、とても優しい絵が、お話とマッチしていると思いました。
一本のトドマツのお話でした。