心に訴えかける絵の補足として文が少しあるせいか、対象年齢は3?5歳となっていますが、これは大人だって十分楽しめると思います。
あっさり読もうと思えば読めてしまいますが、じっくりページをめくると、「深い!」。思わず唸ってしまいます。
モノクロの細かい線画に、たった1色おとこのこの自転車用ヘルメットの赤。おとこのこにグッと惹き込まれます。
おにいちゃんたちと一緒に遊びたくて、ペダルのない自転車で必死について行こうとする おとこのこ。随分と離されたところで、おにいちゃんが戻っきて期待したのもつかの間、“ついてくるな”と放たれた言葉。
おにいちゃんから突き放された おとこのこ の気持ちを考えると、胸がキュッと締め付けられます。
しかも、道を外れて坂から落ち、自転車ごと放り投げだされ、誰も助けてくれる人がいない、一人ぼっち。もう、世界からも見放されてしまったような絶望。
そんなとき、おとこのこの大事な頭を守るヘルメットと同じで、大事な体を守る赤色の殻を持つ かたつむり が。
色と、ゆっくりとしか進めないスピードと、共通点が多い かたつむり が見せてくれた世界は…、それはその人しか見ることができない世界でした。
わたしはこのままで良いんだ。わたしにしか見られない世界もあるんだ。そう気づかせてもらえました。
4歳の子どもがどこまで感じ取ったかわかりませんが、時を経るにつれ、色々と感じ取って味わって欲しいなぁと思います。
世界に置いてけぼりにされたように感じている人に、そっと手渡したい絵本です。